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2017年8月 3日 (木)

読み書き日録2017/8/3

『ホモ・コントリビューエンス』の原稿通読、つづける。田島卓「マルティン・ブーバーにおける貢献心」つづき~終り。このまま入校していいので、天野さんに渡す。
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加藤尚武著作集第3巻の『へーゲルの「法」哲学』の仮ゲラ印刷+通読+ファイル修正をつづける。「10章 トポスとしての家」読む。ヘーゲルの『法の哲学』に遺言についてこんな一節がある。
《遺言する権利の原理に、故人のたんなる直接的な恣意を置くことはできない。それが家族の実体的な権利と対立するときにはとくにそうである。故人の恣意をその死後にも尊重しようとするのは、なんと言っても、家族のかつての成員にたいする愛と尊敬だけしかない。反対に、そのような恣意には家族の権利以上に尊重されなければならないものはなにもない。最後の意志による裁定が効力をもつのは、他の人びとがそれを恣意的に承認した場合だけであろう。このような効力は、承認の権限をにぎる家族関係が縁遠く、無効である場合に限ってしか容認できない。家族関係が現にあるのに、それを無効にすることは人倫にそむく。》(一八〇節注解)
と。加藤さんはこう注釈する。
《故人の意志は、そのままで有効なのではなくて、遺族の承認によって有効となる。したがって故人の意志に反したとしても、遺族の決定を無効とすることはできない。》
 世の中の遺言書の有効性にしがみつく者には決定的な宣告であろう。
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「みすず」8月号に目を通す。アラブ諸国の情報いろいろ。アラブの若者の意識も相当ひどいことになっているらしい。
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榎本櫻湖詩集『Ro``ntgen、それは沈める植木鉢』読了。とても難解で読みづらい詩集だが、読んでいてわかってきたことは、ことばがひとつの像を構成していくというのではなく、ひとつながりの断片を連想的あるいは連辞的に結合させていく手法なので、意味を求めても意味がないのだということがわかれば、難語を駆使しつつことばと戯れていく詩人の遊びに乗っかればいいとわかる。ただそれはやはりとてもしんどい。
《……このように、このような、おなじことばかりを述べたててしまうのは、もはやくちのなかで粘ついた思想の不自由さがもたらすのだと、いっこうに、羽搏いたり、舞いあがったりもしない、鈍重なそれを、不用意に、無辺の島島のあつまりにむやみに膠着させようとしているので、はっきりといっておくべきかもしれないが、これはもうまったくほんとうのことなのだが、ああ、この土地にはもう、随分と永いあいだ、それらがあったという痕跡のすべてが、きれいさっぱり消し去られてしまっているので、もちろんわたしたちはそれを黙ってしずかに看すごすことしかできなかったのだし、あなたがたはそういうわたしたちをやたらに咎めだてることで、埋没してしまうことをまぬかれようとしたのだろうが、結末にはなにも、それとわかるようななにかが用意されているわけではなかったのだから、自分たちの手で、不毛な営みに、朧げな蓋をかぶせておくしかないのだった、……》(104-105ページ)
というわけなのだ。ある意味ではとても自省的な、それでいて挑発的な詩なのだと言えるだろう。
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G・W・F・ヘーゲル『歴史哲学講義(下)』(岩波文庫) の第四部「ゲルマン世界」の「第三篇 近代」の「第三章 啓蒙思想とフランス革命」のつづき~終り(読了)。へーゲルはここでヨーロッパ主要国の国民性やさまざまな政治形態などについて論究し、本当かどうかは別にして、おもしろい特徴づけをしている。たとえばイギリスでは、
《すべての市町村やすべての下部組織や下部団体が、独立してみずから運営にあたります。そういうやりかたで全体の問題が具体的に解決され、特殊な問題も知と意思の対象とされる。特殊な利害がかかわることに、全体の組織が口出しするということがない。したがって、抽象的な一般原理はイギリス人の心を動かすことなく、むなしく耳を通りすぎるのです。》(370ページ)
とか、
《イギリス人は、自分の票を売ったり、議席を買ったりできることすらも、自由の名で呼ぶのです。》(371ページ)
といった具合でおもしろいが割愛する。へーゲルはこの歴史講義を《自由の原理を実現していく主要な精神の形態》(373ページ)と要約しているが、精神主義的歴史解釈の典型と言えようか。
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『石川啄木全集 第二巻 詩集』の「詩稿ノート」の「残花帳」の部のつづき。 《躊躇する事勿れ、顧慮する事勿れ、敵たるを敵とせよ、我が最強の味方は我なりと知れ、心眼をひらいて自家胸中の宇宙を仔細に観よ、……》(「閑天地(六)」) と断言している。

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