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2017年2月16日 (木)

読書日録2017/2/16

うっかり読書日録をつけはじめたことをしゃべってしまった。妙なことをやっていると思われてしまってもしかたないかも。

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日本の民話74『近江の民話』の初校通読、つづける。湖北の部10話34ページ。
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マッシモ・カッチャーリ[上村忠男訳]『抑止する力――政治神学論』第九章「大審問官」読む。ドストエフスキーの〈大審問官〉について「迷いから覚めたカテコーン」と指摘しているが、そう言われればよくわかる。最後に屍臭を漂わせて死んでいるところなど、最後に滅亡するカテコーンそのものだ。《「完成された」カテコーンというのは、とりもなおさず、消えてなくなっていくカテコーン、カテコーンであることを終えてしまうカテコーンにほかならない。……要するに、大審問官とは終末【エスカトン】の無意識な形象なのだ。終末【エスカトン】を遅らせ、それの遅延を作動させることのできる形象ではなく、みずからの無力さを仮面で覆い隠し、カテコーン的エネルギーがすでに使い尽くされて消耗してしまったことをみずからの発する言葉自体が示しているにもかかわらず、そのエネルギーをなおも所有しているものと思いこんでいる、_¨遅れた¨_形象でしかないのである。》(135ページ)
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「森羅」2号を通読。といっても粕谷栄市、池井昌樹の二人誌、しかも手書き限定版。この時間錯誤の方法はインパクトがある。
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「pied」17号に目を通す。海東セラ個人誌。ゲストもいるが、海東の詩「たてまし」のエッシャーふうナンセンスがおもしろい。才能の伸びを感じさせる。
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マラルメ "Correspondance 1962-1971" からの抜き書き(つづき)。《一枚の白紙の恐怖、それはあまりに長いこと夢みられた詩句を要求しているようだ。》《ぼくは怖ろしい一年を過ごしたばかりだ。わが「思考」は思考され、純粋なひとつの「概念」に到達した。その結果、この長い苦悶のあいだにわが存在が苦しんだすべてのものは語りえないが。しかし幸いなことにぼくは完全に死に、わが「精神」が冒険することのできたもっとも不純な領域は「永遠」ということになる。わが「精神」、わが固有の「純粋さ」の習慣となったこの孤独、それを「時」の反映さえもはや暗くすることはできない。》《君に教えておくが、ぼくはいまや非人称のものになり、もはや君のよく知るステファヌではない、――しかし霊的な「宇宙」は、ぼくであったものをとおして自分を見、自分を発展させる、ひとつの能力〔aptitude〕なのだ。》《ぼくは、確信をもって語ることができるために「無」へのかなり長い下降をおこなった。そこには「美」しかなく、それは完璧な表現、「詩」しかもたない。》(1867.5.14 アンリ・カザリス宛て)
《ぼくはただ感覚のみによって「宇宙」の「観念」に到達した。(それはたとえば、純粋な「無」という消しがたい知を保護するために、ぼくは自分の脳髄に絶対的空虚の感覚を課さなければならなかったほどのものだ。)》(1867.9.24 ヴィリエ=ド=リラダン宛て)
《ぼくはと言えば、この二年のあいだ「夢」をその観念的な裸形において見るという罪を犯した。一方では、ぼくは夢と自分とのあいだで音楽と忘却の神秘を積み上げなければならなかった。そしていまや純粋な作品という畏るべきヴィジョンに到達した。ぼくは理性ともっとも親しいことばの意味をほとんど喪失した。》(1868.4.20 フランソワ・コペー宛て)
《実際、ぼくがいるのは特異な位相だ。わが思考は「宇宙」の充実によって占められ、引き伸ばされ、本来の機能を失なった。ぼくは、書くというただひとつの行為に原因をもつとても不安な兆候を感じた。ヒステリーがぼくのことばを乱しはじめたのだ。》(1869.2.4 カザリス宛て)
 とりあえずここでマラルメ書簡集からの抜き書きは終える。やはり1860年代前半から半ばすぎ、つまり詩人が20歳代前半のときに主として親友アンリ・カザリスに宛てた手紙はすごい。骨身を削る思考の過程がたどれるという意味で、これほどリアルな思考の痕跡をとどめた書簡はそうざらにない。

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